BOX 1D 胚で遺伝子発現を調べる方法
from 発生生物学の諸概念
in situ ハイブリダイゼーション
転写されているRNAを検出する方法
もし、DNA/RNAのプローブの配列が、細胞で転写されているmRNAのあるものと相補的であれば、プローブはそのmRNAと塩基対を形成する(ハイブリダイズする)
https://gyazo.com/2f19572789df3d1de122012be99a2fd4
したがって、DNAプローブを用いて、それに相補的なmRNAの、組織スライスあるいは胚全体での局在を決定できる
プローブの検出
放射性同位元素
オートラジオグラフィーにより検出
蛍光タグ(蛍光標識)
蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)
蛍光顕微鏡を用いて検出
酵素標識
その酵素によって無色の基質が有色に変換されることを利用して検出する
放射活性を持つように標識する方法に比して、蛍光色素や酵素で標識する方法は、異なる蛍光色素をつけた複数のプローブを用いることにより、いくつかの遺伝子の発現を同時に検出できるという利点がある
また、人体に有害なことに加えて特別な廃棄処理の必要がある放射活性のある物質を使わなくて済むのも大きな利点
タンパク質の発現や局在を調べることは、そのタンパク質に特異的な抗体を用いて行う
抗体は蛍光色素や酵素で標識する
以上のmRNA、タンパク質を検出する方法は、固定した組織切片や胚を用いて行うもので、生材料では行えない
また、遺伝子発現のパターンとタイミングはレポーター遺伝子をトランスジェニック技術で動物に導入することによっても調べることができる
レポーター遺伝子は容易に検出できるタンパク質をコードしており、特定の時期、特定の場所で発現するよう然るべきプロモーターをつけて導入する
よく用いられるレポーター遺伝子の1つは、細菌の酵素B-ガラクトシダーゼ(β-Gal)をコードするLacZ遺伝子
β-Galの存在は、試料を固定後、青色の生成物を生じるように人工修飾した基質と反応させて検出する
もう一つのよく用いられるレポーター遺伝子は、緑色蛍光タンパク質(GFP)のような、クラゲや海洋生物から単離され、様々な色の蛍光を発する小さな蛍光タンパク質をコードするもの
これらの蛍光タンパク質は生細胞に無害で、培養細胞、胚、場合によっては動物個体全体を適当な波長の光で照射することによって期暗澹に検出できるので、非常に有用
すなわち、これらの蛍光タンパク質を用いると、遺伝子発現を生きた細胞や胚で観察することができる
2つの異なる方法で同一遺伝子の発現を検出したゼブラフィッシュ胚
https://gyazo.com/8a5985c7b8cbaa6c47b03aff68394221
上段は、固定胚を用いて神経堤細胞におけるSox10 mRNAの発現をin situハイブリダイゼーションで検出したもの
下段は、Sox10のプロモーター領域と結合させたGFPレポーター遺伝子を導入したトランスジェニックゼブラフィッシュで、上段の図と同時期の生きた胚を蛍光観察したもの